スティールヘイズ無印で復帰するラスティ

「あの継戦能力に欠けた」スティールヘイズ・オルトゥスのアセンで対艦隊戦なんて無茶をしたものだから、油断したところをHAL(推定)に撃墜されたものの、ターミナルアーマー発動により一命をとりとめたラスティ。
 その後は「オールマインドの野望が阻止出来たら、本格的に解放戦線に鞍替えするつもりだった」……要するに元々解放戦線と通じていたオキーフに助けられ、べリウスシュナイダー病院に搬送され、無事に治療を受ける事ができた。
 さらにその後、レイヴンが再手術を受けるため同じ病院に入院したことで、潜入活動のストレスから解放された事でようやく気付く事が出来た「理想を押し付けた挙句、一方的に危険視し殺そうとした罪」についてラスティは謝罪する。

 ついでに言うなら入院中にラスティは「ヴェスパー時代も含めて迷惑をかけたオキーフへの謝罪」「密偵活動という無茶をして心配をかけたフラットウェルの妻、もとい孤児となった自分の母親代わりへの謝罪」もさせられていたりする。特にフラットウェルの妻に対して謝罪をするときは、自ずとベッドの上で正座の姿勢となり、顔も上げられない程に。
 なおアーキバスから脱走した後、エルカノに身を潜めており解放戦線との直接の接触が無かったラスティに対し、解放戦線メンバーからの謝罪要求がないのは「ラスティがヴェスパーの壁越えの予定についてフラットウェルに伝えた事で、ツィイーは難を逃れる事ができた」等の理由でV.Ⅳの所業について水に流したからなのは言うまでもなく。


 それでもなお素敵性能を最重視するAC乗りとして、嘗て袖にした「近接武器適正95のナハトライアー腕でスライサーを振るうV.Ⅳのために、近接武器適正115のラマーガイアー腕を持って来たシュナイダー営業」「同じくV.Ⅳのために近接武器適正117のVP-46Dを持ってきた元V.Ⅴの部下にして、ラスティらと共にアーキバスを抜けたヘリ操縦士にして整備士」「ファーロン製のミサイルを乗せず、ベイラム製パーツを使ってまで近接攻撃に特化させたスティールヘイズ・オルトゥスのアセンブルを見て『開発に協力してくれたファーロンの顔に泥を塗ったんだったらアルバフルフレームに拘らず、近接武器適正の85のアルバ腕から近接武器適正110のFIRMEZAに変えた方がいいんじゃない?』と言ってくれたエルカノ整備士長」への謝罪はなかったが。
 なお「彼女」たちは全員ラスティ好みのボンキュボンだが、シュナイダー営業は空力が恋人、元アーキバスのヘリ操縦士は解放戦線鞍替え後にアーシルと恋仲に、エルカノ整備士長は既婚者と、見事に全員「ラスティが素敵性能という信念を曲げたところでどうにもならない相手」である。

 それどころかラスティは病院で「解放戦線が技研都市に投入したシュナイダーACはラマーガイアーフルフレーム」という噂を聞いたものだから、そこそこ傷が回復し外出許可を得られたとたん「ツィイーをそんな危険なACに乗せるな」とシュナイダーのベリウス基地に抗議に向かう始末。
 来訪の知らせを受けていたシュナイダー社員から、クラッカーの紙吹雪を浴びたりしながらラスティは「シュナイダーACの広告塔が必要だというのなら私が代わりに乗る、だから……」とツィイーを庇うような事を口にするものの、シュナイダーACという言いまわしから勘の良い人間は察せられるように、これは見舞いに来たファーロン営業に「どうして弊社が開発に協力したオルトゥスに弊社ミサイル乗せなかったんですか」と当て擦りされてしまい、オルトゥスに乗りづらくなったのは内緒にした上で解放戦線復帰時の機体を確保しようという下心からの発言である。
 そして病院スタッフから「ラスティさんが外出許可をとって、シュナイダーの基地に向かいました(ので現地では歓待の準備を整えています)」と聞いて駆け付けた身元引受人のフラットウェルが、「早まるなラスティ! 歩く棺桶に乗るなら老い先短い私が……」と身代わりを申し出る。

「ううっ、弊社的には飛ぶ棺桶と言ってくれた方が」という内心はさておき、「今現在も含めてツィイーちゃんが乗ってるのはナハトライアーっすよ。弊社が守るべき社員をパイロットの安全性を度外視したコアに乗せる訳がないじゃないっすか」と、早まりすぎな野郎二人をもちつかせるシュナイダー社員。
 なお、「共にフラットウェルに引き取られた中である」ツィイーがラスティの訪問を無視して訓練を行っているのは、職場でも兄貴分と顔を合わせるなんて鬱陶しいというリアリティのある妹心によるものである。この件についてだけはラスティも泣いていい。


 「それはそれとして、これでラスティさんとフラットウェルさんが弊社フレームのユーザーになるという言質が取れた訳ですが……」というシュナイダー社員の圧に一度は慄くものの、退院後に解放戦線本部へと贈られて来たラスティの機体は「スティールヘイズ無印アセン完全再現」だったので胸を撫で下ろすラスティ。旧世代型強化人間でもないのに「我々がラスティさんの好みを知らないわけがないじゃないですかー」というシュナイダー社員一同の幻聴が聞こえたのはさておき。
 フラットウェルにはラマーガイアー一式が贈られるもこれは計算通りで、「ラスティ。これはRaDに高く売れるぞ」と眼鏡をキラーンさせるフラットウェル。

 四十路のオッサンの茶目っ気に……いやそれ以上に頭を抱えるべき光景が目の前に繰り広げられた事にラスティは本当に頭を抱えてしまう。
「……さっきの眼鏡の反射は意図的なものかはさておき、どうしてRaDがこんなに解放戦線の本部にいるんだフラットウェル」
「病院でも説明したように、RaDは『コーラルを監視し、必要があればこの星を焼く』秘密結社・オーバーシアーの隠れ蓑だった。……頭目であるシンダー・カーラが破れた事で『ルビコンを焼くかどうかという勝負はレイヴンに譲るが、コーラルを監視し破綻を食い止める使命を諦めたわけではない』と、結果的に帥父とレイヴンとで『コーラルとの共生の道を探る』と目的が一致した事で、コーラル研究者にして機械技師である彼らに滞在してもらっているのだが……」
「少なくとも私の目に見えるRaDは、秘密結社の一員ではなく巷に言われるドーザーとしてのRaDだが」

 眼鏡をキラーンとさせていたフラットウェルがラマーガイアーから目を背けていたのは錯覚ではなく、「皿頭にはホールケーキっぽいの付けないとな」「腕はもっとオモチャっぽいのにしてさ」「胴と脚は……駄目だこれ以上面白くする案が浮かばねえ。ここは一発コーラルを決めて」と、解放戦線の口座にラマーガイアー一式分の金を振り込んだとたんACに纏わりついて魔改造を始めるドーザーがいたからである。
 彼らがコーラルを服用しているのはCパルス変異波形との交信を狙ってのものであり、ふざけた態度も「まともな奴から死んでいくから体だけでも遊べ」というカーラの信念を実践しているにすぎない……はずだ。多分。